「フランスの起床ラッパ」

   幸せな愛はどこにもない


                                       

「幸せな愛ほどこにもない」は、ジォルジュ・プラッサンのシヤンソンによって大衆化した有名な詩である。 この詩をめぐって、のちにフランシス・クレミユとの対話のなかでアラゴンは答える。 「・・・この詩が書かれたのは一九四三年です。そこで歌われていることは、占領の不幸という事実に立って歌われているのです。 フランスの悲劇的な諸条件のもとで、どうして幸せな愛をもつことができたでしょう? ・・・共同の不幸のなかでは幸福はありえない、というのが、当時この詩でうたわれた主題です。 ・・・ここでじっさいに提起されているのは、幸せな愛は可能か不可能かという問題ではなく、夫婦というものが可能か不可能かという問題なのです・・・」(「フランスの起床ラッパ」解説)