「マチュ・ピチュの頂き」(1945年)はネルーダの傑作のひとつといわれ、十二の詩から成り、「大いなる歌」に収められている。
ネルーダがここで目のまわるような隠喩の積み重ねと、高まる抒情とによって歌っているのは、アンデス山中の荒涼とした大遺跡の、その石の美やほろびさったインカ文明についてのロマンティックな夢想でもなければ、死や時間のきびしさや諦観についてのストイックな教えでもない。かれが歌い呼びかけているのは、そこでこき使われて死んだむかしの人たちである。農奴、煉瓦工、織工などの遠いむかしの呻き声や苦しみをききとり、それをうけつぎ、それをさらに現在と未来に投げかけているのである。新しいたたかいのために。(「ネルーダ最後の詩集」)
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