もしもわたしが詩人なら


  

 もしもわたしが詩人なら

わたしは見た 火は燃えていた
ふく風に吹きちざられようと
犬どもが灰のなかまでひっかきまわし
うもれた火種をはじくりだそうと

火はおくぶかいところで燃えていた
自由ということば 真実ということばが
めざめ息吹いているところどころにも
牢獄のなか 時計塔のかげ 地の底にも

たくさんのひとたちの ひとみのなかに
燃えつづけ 燃えうつってゆく火が
どうしてわたしの眼にうつらずにいよう

ひとびとの胸の火を 照りかえして
火をつくりだすものこそ詩人なら
そうしてもしもわたしが詩人なら